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【翻訳版】鼻呼吸確立関連レポートbyChristian Guilleminault

当院では常日頃「鼻呼吸の確立」について探求し、
患者様みなさまへの啓蒙活動を行ってまいりました。
 
この度、「鼻呼吸の確立」について、
「睡眠時無呼吸症候群」を定説化し、名付け親でもあるChristian Guilleminault氏
による大変興味深いレポートを入手し、当院にて独自に日本語翻訳をいたしました。
 
以下にて公開致します、是非医療の進歩にとって一助になれば幸いでございます。
 
※元レポート
Guilleminault-aida2019.jpg
※元レポートPDF
129566report.pdf
 
 
※以下日本語翻訳(当院独自翻訳)
 
子どもの頭蓋顔面及び気道を十分に確保し発達させることを
鼻呼吸確立の最終目標とすべきである
University of Miami Carlos Torre
Stanford University Christian Guilleminault

長年にわたる研究や、本誌掲載記事のChambi-Rocha 他による再研究1で示されているように、子どもの頭蓋顔面発達が活発な時期の慢性口呼吸は、気道に直接影響を及ぼす解剖学的変化を引き起こす可能性がある。2 このような変化は気道の不安定性や閉塞性の増加につながるおそれがあり、その後の人生において睡眠呼吸障害など他の問題を生じる可能性がある。3 口呼吸の子どもに関する事前調査では、口腔顔面成長異常との相関関係が示されている。4 また、口腔顔面の成長をもっとも効果的にうながすようにするためには、鼻で呼吸することと、上手に吸えること、嚥下、咀嚼することの間にも継続的な相互作用がある。5 これは子どもにとっては特に重要であるが、それは鼻上顎複合体が幼年期から思春期前の時期を経て、思春期が終わるまで成長し続けるためである。実際には、口腔顔面成長が最も大きいのは2才までの期間であり、6才までに成人時の顔のほぼ60%が形成される。そのため、適切な鼻呼吸を幼い頃に確立することは骨格構造及び上気道の成長を最大限に高める上で非常に重要である。6,7
鼻呼吸時の鼻上顎複合体と下顎との継続的な相互作用も、顔骨格構造全体が前方水平方向に成長するよう導く上で重要である。この相互作用により咬合平面の角度が緩まって気道が短くなり、舌を収めるためのスペースが口腔内に作り出され、軟口蓋が短くなり、気道拡張筋の機能を高めて気道を開いたままにするのに役立つ可能性がある。8,9 従って、頭蓋顔面及び気道が適切に発達される可能性を最大限に高めるためには、最終的な目標を継続的な鼻呼吸の確立にすべきと考えることは理にかなっている。鼻で呼吸することは、上手に吸えること、嚥下、咀嚼することといった口腔機能と合わせて、誕生から13~15才になるまでの間、上顎間軟骨に継続的に刺激を与える重要な機能である。活発な間は、骨軟骨骨化メカニズムにより、この軟骨結合で顔が成長する。7
Fitzpatrick他によれば、継続的口呼吸により上気道抵抗が著しく増加するとされている。3 1980年代には多くの画期的な実験が行われ、生後6ヶ月間アカゲザル新生児群の鼻腔を塞いだ実験が行われると、ヒトの観察への突破口が開かれた。10 この6ヶ月間の終わりでは、アカゲザルに、歯列弓の狭窄、上顎弓の長さの短縮、反対咬合、上顎オーバージェット、顔面高の増加が認められた。また、さまざまな口腔顔面筋と頸筋の筋電図から律動性放電パターンの突発的な誘導が明らかになったが、これは安静時に大半の健常者が有するほぼ継続的な低振幅及び脱同期性放電とは大きく異なるものだった。11,12 興味深いことに、生後6ヶ月間の終わりにアカゲザルが通常通り鼻から呼吸ができるようにされると、筋放電は正常に戻り、口腔顔面の成長も適切な状態に戻った。
ヒトにおいては、鼻腔抵抗の原因となっている身体構造上の問題を矯正した後であっても、正常な鼻呼吸の回復は引き続き課題の一つである。いくつかの学説では、なぜ何年も口呼吸をしてきた人を再訓練して鼻呼吸にすることがそれほど難しいのかを説明しようと試みている。「鼻呼吸を使わない」場合、固有受容感覚が失われて、機能的な「求心路遮断」が生じ、鼻閉塞の原因となっている身体構造上の要因を治したとしても、鼻呼吸による正常な換気に戻れなくなる。13 慢性口呼吸も、鼻の「換気量不足」につながる可能性があり、それによって炎症細胞が鼻粘膜に蓄積し、鼻腔抵抗の原因となる。14 最後に、慢性口呼吸に起因する口腔顔面成長における同様の身体構造上の障害、特に歯列弓の狭窄により、鼻腔内のスペースが制限されたり、鼻中隔が高口蓋により頭尾方向に圧迫されることで弯曲する原因となったりするおそれもある。15
ヒトとアカゲザルを比較することは、なぜヒトは少しのゆがみも許されないのか、そして、なぜ鼻呼吸の異常や口腔機能の低下に子どもの頃に対処し、頭蓋顔面骨格の成長力を最大限に高めることが重要なのかを理解する助けになるかもしれない。ホモサピエンスにおける発話能力の発達と二足歩行への移行は、喉頭蓋による口蓋への固定がないために支えが不十分な2~4mmの中咽頭の発達と、気道の伸長につながった。16 加えて、発話を容易にするために、大後頭孔が前方に移動し、上下顎複合体が後退して、上部声道が適切に言語発声をするために必要な1対1の割合となった。17 この骨格複合体の後退では、歯が犠牲となった。ヒトの歯が32本なのに対し、チンパンジーなど他のサル目には最大44本の歯がある。この骨格複合体が損なわれた結果、舌は押しのけられて上気道の一部となり、閉塞性を生じる要因となった。18 サルやその他の種の多くは、舌が口腔内に収まっており、気道を閉塞することはない。
睡眠時の鼻呼吸は、適切な換気を促し、反射神経を活発化して上気道を安定させる筋肉の筋緊張が維持されるようにし、口呼吸により気道が不安定にならないようにする上で、極めて重要である。19 生まれてすぐの子どもはその時間の約80%を眠って過ごしており、6才の子どもでさえ睡眠時間は依然として長く、一日の最大25%を睡眠に充てることもあるということを考えると、睡眠時の口呼吸に対処することは非常に重要である。睡眠中の鼻呼吸と口呼吸をモニターした研究によると、正常な人の場合、睡眠時間の96%は鼻呼吸を行っていることが示されている。20 この所見は、他の研究でも確認されており、4才から6才の正常な子どもでは、睡眠中の口呼吸の時間は0~10%の間で前後しており、平均では4%であることが示されている。
これらすべてを考慮すると、子どもの骨格や気道の発達に影響を与える慢性な口呼吸の問題がある場合は対処することが非常に重要である。このような場合においては、患者は舌をはじめ、口蓋扁桃、舌扁桃など他の構造を収める余地がない可能性があり、それが睡眠中に閉塞性を生じる要因となる可能性がある。骨格発達が不十分なせいで気道のスペースが制限されている場合にも、患者が睡眠や筋肉を緩める自然な段階を経る際に、適切な気道の開存性を維持する妨げになるおそれがある。これらの要素が組み合わさることで、最終的に睡眠時の空気の流れが制限される可能性があり、頻繁に覚醒したり、血液酸素飽和度の低下を引き起こしたりする。これが閉塞性睡眠時無呼吸として知られるタイプの特徴である。